保護者の「期待」がやる気を削ぐことも。
学校・塾・地域…“複数の目”で「良いところ探し」を。

お話がすごく具体的で、子どもに声をかける際のイメージが湧きます。ただ、保護者としては、「ここまでできるなら、もっと(レベル的にも・時間的にも)やってほしいな」とか、ついつい「できていないところ」に目が行ってしまいがちです。

そもそも、自分の子どもを相手にするということは「親としての欲」が出るので難しいんです。私は職業柄、本当にさまざまな子の成長パターンを知っていますが、それでも自分の子は叱りすぎたな、という苦い思いがあります。つい「このくらいできるだろう」という期待値が大きくなりますし、子どもの側も「お父さん(お母さん)なら僕(私)のことをわかってくれているんだから、今日はもう遊ばせてよ」と甘えが出る。時々は、保護者の方が「あ、ちょっとやりすぎかも」という意識を持って、お子さんをよく観察しましょう。

あとは、学校や塾など、いろいろなところに上手にお願いしてみましょう。例えば何か注意したり褒めたりするとき、うまく第三者から伝えてもらう。それが、直接伝えるより子どもに響くことも多々あるんです。また、家では見えない・見せない、「お子さんの良いところ」をたくさん見つけてもらうと良いと思います。

子育てって、本当は「良いもの探し」のはずなんです。いえ、本来は、人生ぜんぶがそうなんですよ。自分にないものや不得手なもの、「悪いもの」というのは、目につきやすい。そうではなくて、「ある」もの、「良いもの」を数えていく。その一つひとつを伸ばしていくと、人生はとても豊かになっていきます。そういう“思考法”を保護者の皆さんが実践し、お子さんにも生活の中で毎日毎日、「良かったね」「嬉しかったね」と伝えていく。

すると、お子さん自身もだんだん、周囲のサポートに気付けるようになります。お父さん・お母さんが、お友だちがこんな良いことをしてくれた、とか。それに感謝できるようになっていくと、お互い笑顔で向き合える。そうすれば親子共に、今以上にもっと幸せに生きていけるんじゃないかと思います。

間違えてもOK。「素晴らしいセンスだね!」
小学生のうちは豊かな発想を認める声かけを。

大人でも、会社・家庭・地域・友人知人…、場面ごとで「自分」を使い分けています。子どもも同じかもしれませんね。家庭の外での活動を「子どもの良いところを探してもらう場所」と捉えると、保護者にとってもプラスが大きいことがわかります。

もう少し付け加えておくならば、「せっかく出てきたやる気を削がない工夫」も大切です。私自身、現場で長く理系教科を教えてきましたが、特に算数・数学というのは答えが一つにビシッと決まる非常に気持ちの良い学問ですよね。そして当たり前なんですけど、子どもたちは本当に素直で、できれば楽しいですし、できないとつまらないんです。

だから、やさしい問題をたくさん解く、からでいいんです。どんどん解いて、まずは好きにさせましょう。「やさしい問題ばかりで大丈夫?」と思われるかもしれませんが、やさしい問題の中にも、きちんと真理が入っていて、できるお子さんほどその真理を確実に自分のものにしていきますから大丈夫です。演習を重ねることで、「何となくできた⇒本当に中身が理解できた」に深まっていきますから。

もう一つ、これは理系ならではの考え方かもしれませんが、子どもたちが間違えたときに、ぜひどんな間違いをしているかじっくり観察してあげてください。すると、意外にも「この発想は面白い!」という間違いをしているケースがあるんですね。それを、大いに褒めてあげてください。特に自然科学系は、「当たり前の、常識と思われていることを疑う」ことから進歩してきた学問です。「間違ってOK! 模範解答はこうだけど、違う考え方ができるあなたは素晴らしいセンスの持ち主だよ!」と認めてあげれば、だんだん、間違えることを嫌がらなくなっていきます。

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