小学5・6年生の英語。「教科化」されてどうなった?

教育

2020年から小学校で「新学習指導要領」が施行されました。新しく始まった「プログラミング教育」や「アクティブ・ラーニング」が話題になりましたが、最も大きく変わったのは、やはり『外国語(英語)』だと言えるでしょう。

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英語が「教科」になったようですが、今までの『外国語活動』とあんまり変わらないみたいという話も聞きます。結局、何が変わったんですか?

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今まで5・6年生でやっていたコミュニケーション中心の『外国語活動』が3・4年生に早まり、5・6年生では成績表に評価のつく『外国語(英語)』という教科になりました。内容も、「読む」「書く」が加わったんですよ。英単語も、「小学校卒業までに600~700単語をマスターする」という目標ができました。

小学校英語、何がどう変わったの?

小学校の外国語教育に関しては、3,4年生に『外国語活動』(英語に親しむ授業/成績がつかない)が導入され、5,6年生の英語は、「教科」(英語を学ぶ授業/成績がつく)になりました。内容も、『外国語活動』の時は、「聞く」「話す」が中心。これに、「読む」「書く」が加わり、次の4観点の成績付けが行われる予定です。

「外国語」の評価観点

  • コミュニケーションへの関心・意欲・態度
  • 外国語表現の能力
  • 外国語理解の能力
  • 言語や文化についての知識・理解

単語の習得目標は600~700語。高校卒業時は最大約1.6倍に!?

「習得単語数」の目標も設定されました。その数なんと約600~700語!もちろん、「その単語、知ってる~!」という子を増やすことが目的なので、「カンペキに書ける」までは求められません。が、それなりの習熟度を求められることが予想されます。

というのも、実はこの数、「高校卒業時までに覚えましょうね」と文部科学省が定めた“新しい英語到達度レベル”を加味した目標設定なのです。今までは、高校卒業までの「目標習得単語数」は約3,000語でした。それが、新しく定められた学習指導要領では、なんと4,000~5,000語!最大で1.6倍の分量です。

そこから逆算し、「小学校のうちから前倒して覚えていきましょう!」というのが今回の小学校英語の目標設定です。となると、まったく「読めない」「書けない」「わからない」ままで大丈夫!…ともどうやら言えない状況です。

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なんか、大変そうな感じですね。今までは、英会話教室で、簡単な歌とか会話しかやってきてないんですけど…。“英語嫌い”にならないか心配!

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そうですよね!わかります!
ですから、“英語嫌い”にさせないために、「ペアワーク」中心のゲーム性にあふれた、とっても楽しい教科書が導入されました。ところが、意外にも難しい文法や単語がいっぱい登場し、戸惑っている子も多いようです。コロナのせいで、そもそも「ペアワーク」を禁止する学校も多く、先生たちも大変そうです。学校間で扱う内容にばらつきも出ています。

「英語嫌いを作らない」ための工夫。でも実際の教科書は…

導入された教科書は、楽しく学べる工夫が満載のカラフルなテキストです。「聞く」「言う」「歌う」「ゲームをする」などのアクティビティが中心で、クロスワードパズルや絵カードなど「英語嫌いを作らない」ための工夫がなされています。今までの『外国語活動』と同じく「英語が好き!」という気持ちをより大きく育みつつ、さらに進んだ英語学習に発展させようという意図が感じられます。

一方で、「これはなかなか厳しい…」と思わせる実態も。教科書の内容は、最初は「自己紹介」なのでまだしも、その後は「小学校で習う教科」「一日の生活」「行事」「行ってみたい国・地域の紹介」「日本の文化」「将来の夢」「中学校でやりたい部活動」…などなど、さまざまなシチュエーションが登場します。出てくる単語も「入学式」「水泳競技会」「社会科見学」など、大人も一瞬「それってなんだっけ?」と思う言葉が盛りだくさん。月や曜日、序数、頻度を表す副詞(always,usually,often,sometimes…)、国名や地域名なども登場し、決して易しいとは言えない内容になっています。

そうした単語や文法たちが、特にルールもなくバラバラに登場し、あくまで「まとまった表現として、反復練習で覚える」ことが基本となります。この内容をもし「書く」ところまで進めるとしたら、当然、習熟度にばらつきが出るでしょう。さらに成績がつくことで「英語、きら~い、わかんな~い」となってしまうことも十分に考えられます。

思うような授業ができない!―生まれる学校間格差

さらに、この状況に追い打ちをかけているのがコロナ禍です。ご存じのように、子どもたちは感染防止のため、できるだけお互いの接触を避けて生活をしています。当然、英語の授業でも、発音練習は小声もしくは禁止。向かい合わせのペアワーク(会話の練習、カードの交換や意見交換など)も思うようにできません。“コミュニケーション重視”の授業で、コミュニケーションが原則禁止……先生方の苦悩が目に浮かぶようです。

さらに、学校間やクラス間でも大きな差が生まれています。歌や発話、ゲームなどで「楽しく英語に触れる」ことを重視する学校。その逆に、「読む」「書く」ペーパーテストを徹底強化する学校。前者の学校の生徒たちに「単語テスト」を課してみると、「口で答えるならできるけど、紙に書くの?はじめて~!」となるでしょう。当然、テスト重視の学校に比べて、最初は点数が取れません。

このように、教科書は一緒だけど、教え方はバラバラ。そんな授業を受けた子どもたちが、中学1年生で一斉にスタートを切ることになるのです。

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コロナの影響が、そんなところにも出ているんですね!やっぱり、幼い頃から英語をやらせないと、みんなについていけなくなりますか?もう小学生ですが、今からでもできることはありますか?

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乳幼児期に英語にまったく触れていなくても、十分ついていける内容です。ご家庭では、“楽しみながら英語の世界に触れさせる”工夫をしてみてください。それが、小学校英語に向けての下地作りにつながってきます。

家庭では“楽しみながら英語に触れる”機会を

小学校に入っていきなり、「さぁ、英語の勉強ですよ!」と言われたら、子どもはやはり戸惑ってしまうかもしれません。だからこそ、事前にできるだけ自然なかたちで、日常の中に「英語に触れる」時間を作ってあげることが大事です。

一例ですが、さなるの英語(小5・小6)では、小学校の教科書に対応した内容で先取り学習を進めています。「学校の授業がよくわかるのでうれしい!」と、塾生たちから喜びの声が上がっています。やはり、まったく初めての状態で現在の教科書に立ち向かうのは、なかなかハードルが高いようです。
とはいえ、小学校英語で扱われる内容は、あくまで子どもたちの日常生活の範囲内のもの。0歳児や幼児期の頃から「とにかく英語をやらせなきゃ!」といたずらに焦る必要はありません。

ご家庭では、身近な素材であるテレビや動画、絵本や図鑑、地域の交流会などで、子どもたちに「日本語以外の世界がある」ということを気づかせてあげましょう。無理なく楽しめるものを選び、「英語って楽しい!」と思えるような気持ちを育てれば、それが小学校英語に向けての下地作りにつながっていくはずです。

佐鳴予備校

佐鳴予備校

小中高一貫教育を愛知県、静岡県で展開し、岡崎、旭丘、浜松北高など地域難関高校No1の合格実績を誇る予備校。集団授業だけでなく、生徒のニーズに合わせた個別指導、大学受験向け映像授業などのコンテンツを紹介。

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